生命居住可能領域ハビタブルゾーン
ハビタブルゾーン
宇宙の中で、生命が誕生し、生息できる環境にある領域のことを「ハビタブルゾーン」といいます。太陽系では、地球軌道のやや内側から、火星軌道にかかるくらいの領域がハビタブルゾーンに相当します。地球は「ハビタブルゾーン」の中にあります。
宇宙には、太陽系のように恒星の周りを回る惑星「系外惑星」は、これまで4000以上の候補が見つかっています。そこにハビタブルゾーンが存在するか否かの調査が進められています。
必須条件は「液体の水」
生命にとって必要不可欠なものは「液体の水」です。それゆえ、ハビタブルゾーンは、液体の水が存在できるか否かによって決まります。液体の水が存在するためには、惑星が公転する楕円形の軌道のほぼ中心に位置する恒星(太陽)からほどよい距離にあること、惑星の大きさがほどよいことなどが条件になります。
※ハビタブルゾーンを示すときには、主に惑星が公転する軌道のほぼ中心にある恒星からの距離に応じた領域で表されます。
太陽からのほどよい距離にあること
太陽の直径は地球の約109倍あります。普段、私たちが太陽をそれほど大きく感じないのは、太陽と地球が離れているためです。太陽と地球の間の距離は、地球が生き物の暮らせる星であるかどうかに関わる非常に大きなポイントになります。
太陽の近くを公転する水星や金星は、高温により水が蒸発してしまい、液体の水は存在できません。一方、木星の衛星カリストには水が存在しています。しかし、太陽から遠いため、表面温度は-100℃以下となり、水は凍ってしまい、液体の水は存在できません。
このように、太陽に近すぎれば水は蒸発してしまい、遠すぎれば凍ってしまうため、ハビタブルゾーンにはならないのです。地球は、水が液体として存在できる奇跡的な距離にあるのです。
惑星がほどよい大きさであること
地球に液体の水が存在するもう一つの理由は、地球がほど良い大きさであるためです。つまり、地球自体の質量(重さ)もほどよくなり、重力が適度に作用し、水分水が、地球上にとどまることができるのです。逆に月のように小さいと、太陽からの距離が地球と同程度でも、月自体の質量が小さく、重力が弱いため水の分子を宇宙へと逃してしまうのです。惑星に水が存在するためには、その大きさ(重さ)がほど良いことも関係するのです。
※もし、地球が今よりも遥かに大きければ重力も大きくなり、軽い水素やヘリウムなどの気体を引きつけてしまいます。すると木星のようにガス惑星になってしまい、生命が育まれる環境にはなりません。
予想問題
トラピスト1に属する惑星の想像図
2017年2月、地球から40光年の距離にある恒星「トラピスト1」に、7つの惑星が存在することが発表された。太陽系の外に存在する惑星「系外惑星」はこれまで4000以上の候補が見つかっているが、今回の発見は特別とされている。その理由は、地球に似た大きさの惑星が7つも存在し、しかもそのうちの3つは生命が存在することができる領域「ハビタブルゾーン」に位置しているからである。
問1 下線部について、惑星が「ハビタブルゾーン」に位置するための条件として、液体の水の存在が必要であるが、それは何によって決まるか。最も適当なものを次のうちから一つ選べ。
① 惑星の公転速度と惑星の自転速度
② 惑星の公転速度と中心にある恒星からの距離
③ 惑星の自転速度と惑星の大きさ
④ 中心にある恒星からの距離と惑星の大きさ
問2 火星には、かつて大量の液体の水があったと考えられるが、地球のように海はできなかった。その理由として最も適当なものを次のうちから一つ選べ。
① 火星の自転速度が速いため、遠心力で水分子が吹き飛ばされてしまったから。
② 火星の重力が大きく、水分子は地下深くに吸収されてしまったから。
③ 火星は地球より小さく軽いため、水分子に働く重力が弱いため、水分子は宇宙へ逃げてしまったから。
④ 火星は高温であり、水分はすべて蒸発してしまったから。
予想問題の正解
問1=④ 問2=③
NHK サイエンスZERO/NHK高校講座